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天久鷹央シリーズの読む順番|全22作の刊行順と「完全版」「推理カルテ/事件カルテ」の違い

結論から書きます。天久鷹央シリーズは刊行順に読めば問題ありません。 例外は『スフィアの死天使』1冊だけで、これは物語の時間軸としてはシリーズの最初にあたります。

ただ、このシリーズは「完全版」と「新作」が混在し、サブタイトルが「推理カルテ」と「事件カルテ」の2種類あるので、書店で並んでいるのを見ても順番が分かりません。私も読み始めるときに迷いました。

この記事では、実業之日本社文庫版の全22作を刊行順に並べ、それぞれが短編集か長編か、完全版か新作かを整理します。 各巻の感想記事にもリンクしています。

本日2026年12月4日、第22作『戦神の秘宝』が発売されました。 これで実業之日本社文庫版は22作になります。

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まず押さえる3つのこと

この3点だけ分かっていれば、あとは刊行順に買っていけば迷いません。

迷いどころ 答え
「推理カルテ」と「事件カルテ」の違いは? 推理カルテ=短編集、事件カルテ=長編。物語が分かれているわけではない
「完全版」とは? 新潮文庫nexで出ていた旧シリーズに加筆と書き下ろしを加えて実業之日本社文庫から出し直したもの
どの順で読む? 刊行順でよい。 例外は『スフィアの死天使』のみ

「推理カルテ」と「事件カルテ」の違い

サブタイトルが形式を表しています。 ここを知らないと、巻ごとの読み味の差に戸惑います。

サブタイトル 形式 読み味
推理カルテ 短編集 1話ごとに謎が完結する。区切りがよく、隙間時間で読める
事件カルテ 長編 1つの事件を最後まで追う。緊張が持続する

「推理カルテ」は『小説新潮』『yom yom』に載った短編に書き下ろしを足したもの、「事件カルテ」は文庫の書き下ろし長編です。ほぼ交互に刊行されているので、刊行順に読むと短編集と長編が入れ替わりで来ます。

途中で「前の巻と手触りが違う」と感じたら、たいていサブタイトルが変わっています。 作風が変わったわけではありません。

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「完全版」とは何か

このシリーズは2014年10月に新潮文庫nexで始まりました。 掲載誌は『小説新潮』と『yom yom』です。

その旧シリーズを、2023年10月から実業之日本社文庫が「完全版」として出し直しています。 加筆と書き下ろしを加えたもので、たとえば第1作には書き下ろし短編「蜜柑と真鶴」が加わっています。

これから読むなら完全版でかまいません。 旧版を探す必要はありませんし、いま流通しているのも完全版です。

並行して完全新作も出ています。完全版13作+新作9作で、合計22作という構成です。

全22作の刊行順

発売日順に並べたものが下の表です。 同じ日に2〜3冊まとめて出ている月があるので、書名だけ見ていると順番が分からなくなります。

# 書名 発売日 形式 区分
1 天久鷹央の推理カルテ 2023年10月6日 短編集 完全版
2 吸血鬼の原罪 2023年10月6日 長編 完全新作
3 ファントムの病棟 2023年11月9日 短編集 完全版
4 スフィアの死天使 2023年11月9日 長編 完全版
5 密室のパラノイア 2023年12月8日 短編集 完全版
6 幻影の手術室 2023年12月8日 長編 完全版
7 悲恋のシンドローム 2024年1月13日 短編集 完全版
8 甦る殺人者 2024年1月13日 長編 完全版
9 神秘のセラピスト 2024年2月5日 短編集 完全版
10 火焔の凶器 2024年2月5日 長編 完全版
11 羅針盤の殺意 2024年2月5日 短編集 新作
12 神話の密室 2024年3月7日 短編集 完全版
13 魔弾の射手 2024年3月7日 長編 完全版
14 久遠の檻 2024年4月5日 長編 完全版
15 生命の略奪者 2024年4月5日 長編 完全版
16 絶対零度のテロル 2024年4月5日 長編 新作
17 猛毒のプリズン 2024年10月4日 長編 新作
18 呪いのシンプトム 2024年12月6日 短編集 新作
19 鏡面のエリクサー 2025年4月4日 長編 新作
20 血脈のナイトメア 2025年12月5日 長編 新作
21 アノマリーの追憶 2026年4月3日 短編集 新作
22 戦神の秘宝(未読) 2026年12月4日 長編 新作

2023年10月から2024年4月までの7か月で16作が一気に出ています。 ここが「どれから読めばいいか分からない」原因です。この期間は毎月「短編集1冊+長編1冊」のペアで出ていると考えると整理しやすくなります。

2024年10月以降は新作のみになり、刊行ペースも落ち着いています。

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『スフィアの死天使』だけは時系列が違う

刊行順=物語の時間軸になっているのですが、『スフィアの死天使』(4番目)だけが例外です。

この巻は小鳥遊優が統括診断部に赴任したばかりの7月の事件を描いています。一方、第1作『天久鷹央の推理カルテ』の第1話「泡」は、小鳥遊が赴任して4か月後の話です。

つまり時系列で並べると、『スフィアの死天使』がシリーズの最初になります。

読み方 おすすめ度
刊行順に読む(『天久鷹央の推理カルテ』から) おすすめ。 設定の説明が過不足なく入ってくる
時系列順に読む(『スフィアの死天使』から) 可能だが、長編から入ることになるので重い

私は刊行順を勧めます。 『スフィアの死天使』は閉鎖病棟という環境の圧が主役の長編で、シリーズの入口としては負荷が高いからです。第1作は短編集なので、鷹央という人物と統括診断部に慣れるにはそちらのほうが向いています。

どこから読むか

初めて読む人

第1作『天久鷹央の推理カルテ 完全版』から。 短編集なので1話ずつ区切って読めます。

この1冊で続けるかどうかを判断できます。 天久鷹央というキャラクターは好みが分かれるので、ここで距離が詰まらないなら先の巻でも詰まりません。

アニメやドラマから来た人

映像化されているのは第1作を中心とした「推理カルテ」側です。原作の出発点も同じなので、やはり第1作から読むのが素直です。

長編から入りたい人

完全新作の『吸血鬼の原罪』という選択肢もあります。第1作と同日に出た書き下ろし長編で、旧シリーズを読んでいなくても入れる作りです。

メディア展開

シリーズは2026年5月時点で累計390万部を突破しています。 映像化も漫画化もされています。

TVアニメ 2025年1月2日〜4月3日・全12話/TOKYO MXほか/監督:いわたかずや/制作:project No.9/音楽:fox capture plan
TVドラマ 2025年4月22日〜6月24日・全9話/テレビ朝日系/脚本:浜田秀哉/制作:テレビ朝日・東映
漫画① 『天久鷹央の推理カルテ』作画:緒原博綺/新潮社・全4巻(2016〜2018年)
漫画② 『スフィアの死天使』作画:武梨えり/講談社・全3巻(2024〜2026年)

アニメとドラマが2025年に立て続けに放送されています。 原作を追いかけるなら、実業之日本社文庫版の完全版から入るのがいまは一番早いです。

登場人物と舞台

天久鷹央(27歳) 副院長兼統括診断部部長。アスペルガー症候群と広義のサヴァン症候群を持ち、超人的な記憶力と計算力で診断する
小鳥遊優(29歳) 語り手。元外科医で、内科医見習いとして統括診断部に派遣された
鴻ノ池舞(25歳) 研修医。鷹央に憧れている。『アノマリーの追憶』では彼女の視点で語られる
統括診断部 鷹央の父が設立した、診断困難な患者と不可解な事件を診断で解決する部門。病院屋上の赤レンガ造り平屋にある

語り手が鷹央ではなく小鳥遊であることが、このシリーズの読みやすさを支えています。 読者は小鳥遊の位置から鷹央を眺めるので、鷹央の突飛さが直接ぶつかってきません。

著者の知念実希人は1978年沖縄県生まれ、東京慈恵会医科大学卒の内科医で、本屋大賞に4度ノミネートされています。

21冊読んで感じたこと

このシリーズがずっと同じことをやっているのは、「先に現象があり、あとから名前が付く」という順序です。

「呪い」も「吸血鬼」も「悪魔」も「臓器の記憶」も、怪奇現象として提示されるのではありません。 まず説明のつかない症状が置かれ、周囲の人間がそこに便利な名前を貼っていく。鷹央はその名前を否定も肯定もせず、事実だけを積み上げていきます。

そして説明がついても、人がそこに意味を見た理由までは消えません。 どの巻にも共通して残るのがこの後味です。

だから、すっきりした解決を求めて読むと物足りなくなります。 逆に、割り切れないものが残るのを面白いと感じるなら、22冊ずっと同じ手触りが続きます。

まとめ

  • 天久鷹央シリーズは刊行順に読めばよい
  • 推理カルテ=短編集、事件カルテ=長編。 物語が分かれているわけではない
  • 「完全版」は新潮文庫nex版に加筆・書き下ろしを加えたもの。 これから読むなら完全版でよい
  • 完全版13作+新作9作で全22作(2026年12月4日時点)
  • 2023年10月〜2024年4月の7か月で16作が集中刊行された。 ここが分かりにくさの原因
  • 『スフィアの死天使』だけ時系列がシリーズ最初。ただし入口としては長編なので重い
  • 初めてなら第1作『天久鷹央の推理カルテ 完全版』。1冊で続けるか判断できる
  • アニメ(2025年1〜4月・全12話)とドラマ(2025年4〜6月・全9話)が放送済み
  • 通底するのは「先に現象、あとから名前」という順序と、説明後に残る割り切れなさ