『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』(田中宏暁/講談社ブルーバックス)は、運動生理学の研究者が書いた科学書です。核にあるのは「スロージョギング」——歩くくらいのペースで走る方法を、生理学のデータで裏づけています。
この記事は2024年の公開後、2026年9月に見直しました。 公開当時は「理論より心理寄りの本」「走り方を教える本ではない」と書いていましたが、これは書籍の性格づけとして誤りでした。実際にはトレーニング理論と生理学が中身の大半を占めるブルーバックス(科学新書)です。書誌情報と本の構成を追記したうえで、読後感の部分はそのまま残しています。
- 本書は運動生理学に基づくトレーニング書です。 心理学やメンタル本ではありません
- ただしその理論が「走る前のハードルを下げる」方向に働くという点が、私にとっての読みどころでした。以下はその視点からの感想です
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書籍の基本情報
| 書名 | ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング |
|---|---|
| 著者 | 田中 宏暁(福岡大学教授・運動生理学) |
| 出版社 | 講談社(ブルーバックス) |
| 発売 | 2017年2月24日 |
| ジャンル | 運動生理学・トレーニング |
章構成
- 第1章 走るための基礎知識【理論編】——ウォーキングよりランニングがいい理由
- 第2章 走るための基礎知識【実践編】——スロージョギングが、マラソン完走・サブスリーへのいちばんの近道
- 第3章 ランニングとダイエット
- 第4章 ランニングの生理学
- 第5章 マラソンへ向けたトレーニング
- 第6章 レースのコンディショニング
- 第7章 ランニングと健康
目次を見て分かる通り、マラソン完走やサブスリーを目標に据えた、具体的なトレーニング書です。「走る前の心構え」だけを扱った本ではありません。
この本の中心にあるもの:スロージョギング
本書が提示する方法は明快で、「歩くくらいのゆっくりしたペースで走る」というものです。
著者はこの方法について、次のような点を生理学的な根拠とともに説明しています。
- 準備運動も筋力トレーニングも必要ない
- 膝や心臓への負担が小さい
- 消費カロリーは同じ距離のウォーキングの約2倍
- 血圧や血糖値を下げる効果が確認されている
ここが本書の要点です。 精神論で「まず走り出そう」と言うのではなく、「そもそも速く走る必要がない」ことをデータで示すという構造になっています。
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私にとっての読みどころ:ハードルの下げ方
ここからは私個人の受け取り方です。
ランニングの本だと思って読み始めたのに、序盤から「そもそも、なぜ多くの人は続かないのか」という話が生理学の側から説明されていて、少し意表を突かれました。
私が読む前に抱えていたのは、こういう感覚でした。
- シューズを履くまでに考えてしまうこと
- 今日はやめておこうかと迷う瞬間
- 走れなかった自分への評価
本書はこれらに直接答える本ではありませんが、「きつい思いをしなければ効果がない」という前提そのものを崩してくるため、結果として迷いの材料が減りました。
語り口:叱咤しない
読みやすいと感じた理由は、励まし方が強引でないところでした。「気合で走れ」とは言わず、なぜその方法で十分なのかをデータで示していきます。
読者の気分を持ち上げるというより、いったん机の上を片付けるような書き方だと感じました。私の場合、「やる気がない」のではなく「判断材料が散らかっていただけかもしれない」と思えるようになりました。
読後に変わったこと
読み終えてから、走るかどうかの結論が劇的に変わったわけではありません。ただ、迷っている最中の自分を観察できるようになりました。
「今日は体調の問題なのか、気分の問題なのか」と一段階だけ言葉にできると、その日の判断が雑になりにくくなります。走る日は走るし、休む日は休む。それでも、休む日が“負け”の感覚になりにくくなったのは、この本の余韻でした。
これは本書が心理を扱っているからではなく、「強度を上げなくてよい」という理論的な裏づけを得たことの副作用だと今は理解しています。
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好みが分かれそうな点
科学書なので、読み進めるには一定の集中が要ります。 図表やデータが多く、テンションが上がるタイプの本ではありません。
また、フォーム改善の細かいテクニックや、週単位の練習メニュー集を求めている人には物足りない可能性があります。本書の主眼は「なぜそれでいいのか」の説明にあり、メニュー表を並べる本ではないためです。
どんな人に向いているか
向いていると思った人
- ランニングを始めたいが、きつそうで踏み出せない
- 「なぜそのやり方でいいのか」を納得してから始めたい
- マラソン完走を目標にしていて、科学的な根拠のある方法を知りたい
- ダイエット目的で走ろうとしている
合わないかもしれない人
- すぐ使える練習メニューだけが欲しい
- フォーム改善のテクニック集を探している
- データや図表を読むのが負担に感じる
まとめ
本書は運動生理学に基づいたトレーニング書であり、その中心はスロージョギングです。
私にとっては、「速く走らなくていい」という理論的な裏づけが、結果的に走る前の迷いを減らしてくれた本でした。走ること自体を強制せず、前提の方を組み替えてくる構成が合っていたのだと思います。
一方で、具体的な練習メニューだけを探している人には遠回りに感じられるはずです。ランニングとの距離感を整えたいときに読むと、効き方が大きい一冊だと感じました。